livingdining
SPECIAL2017.2.28 (Tue)

予約のとれないラグジュアリーレンタル邸宅THE HOUSEのオーナーに学ぶ「これからのPR」とは?

0103amano.png

  • 天野渉 | Wataru Amano
  • 株式会社シグナル 取締役COO

メディアの信頼が問われる一方で、個人の発信力が高まっている今。PRの現場では、これまでのように広告換算の数値を追い求めるだけでは不十分になっていることを実感します。

こうした変化の中で、企業のメッセージを効果的にターゲットへ伝えるにはどうすればいいのでしょうか? コミュニケーションデザインプランナーとしてシグナルともお付き合いが長く、葉山にある予約の取れないラグジュアリーレンタル邸宅「THE HOUSE」「THE HOUSE on the beach」のオーナーも務める小林麻衣美さんに、これからのPRについて伺いました。

広告が優位だった時代にPRに注目した理由とは

天野 麻衣美さんと出会った10年くらい前だと、広告代理店の人はPRを広告の下のレイヤーに置く傾向が強かったように思うんですけど、どうして外資系広告代理店出身の麻衣美さんがPRをやっていこうと思ったんですか?

img_2613

Maemi Kobayashi

  • 小林麻衣美 | Maemi Kobayashi
  • 株式会社HappinessWithin 代表取締役、株式会社Link to Reality代表取締役、THE HOUSE・THE HOUSE on the beach・SUPclubオーナー。外資系広告代理店などを経て独立。広告・PRの企画から実施、コンサルティングも行う。

小林 当時プロモーションのお仕事をさせていただいたクライアントの社長さんが広告はもうやらないっていうスタンスで、「価値をつくればPRになるんだ」ということをおっしゃってたんです。広告代理店の人たちはそこでもう「?」だったんだけど、私はなんとなくそれにすごく惹かれて。

そのクライアントのプロモーションが広告とかタレントを使わずにPRで成功したことで、「これからはPRだ」って実感が湧いたの。それで、シグナルに一緒にやろうよって声をかけたんだよね。

天野 一緒にランチに行く機会があったときに、麻衣美さんは「これからはPRでしょ!」って話をしてくれて、それで僕は大ファンになったんですよね。そこからは、麻衣美さんから声をかけてもらったり、こちらからも麻衣美さんにプランナーとして入ってもらったりするようになって。

でも、他にもPR会社をたくさん知っている麻衣美さんが、シグナルを選んでくれる理由って何なのかなって思うんですけど。

小林 本人を前にして言うのもあれですけど、「人」なんですよね。やっぱり。天野くんとはもう、10年も前にクチコミマーケティングの出始めたころからの付き合いでしょ。ステマみたいなものもあった混沌とした時代に一緒にやれる会社を探した中で、天野くんはクチコミの広げ方とか、実現に対する見方が信用できるなと思ったの。

私はアイデアをぶつけあって、「それ、面白いですね!」ってキャッチボールができる人とじゃないと仕事できない。ただタレントを使うとかじゃなくて、もっと誰でもできるわけじゃない方法を探し出せるパートナーが欲しかったの。シグナルは、頭を絞って一緒に考えてくれるのがすごくうれしい。

天野 そう言ってもらえると、うれしいです。

小林 シグナルは他社に比べて、本当にクチコミが広がっていく価値づくり、システム作りが強みだと思う。シグナルがそこを作ってくれれば、マスの仕掛けとか、PRイベントなんてどこでもできると思ってるから。

メディアリレーションだけじゃない「これからのPR」

天野 早くからPRの重要性に気づいて、コミュニケーションデザイナーとして活躍されてきたわけですが、麻衣美さんが考える「これからのPR」について聞かせてもらえますか?

小林 残念なことにWELQの問題(※1)があってから、メディアが信用されなくなってます。もうメディアのほうだけを向いているんじゃダメな時代になってて、逆に個人が感動して取り上げてくれるコンテンツ作り、ストーリー作りを徹底していけば、それだけで広まっていくんですよ。でもこれは、フォロワーがたくさんいる人にアプローチすればいいっていうこととも違って、フォロワーが全部同じ層の人じゃなきゃダメ。

THE HOUSEでは、インフルエンサーの山中美智子さんがいらしてInstagramに写真を1枚投稿してくれたら、キュレーションメディアの10倍反響があったの。彼女のフォロワーにはビーチ系が好きな女の子たちが40万人くらいいるんだけど、他の層の人に比べると、その子たちには突き抜けてTHE HOUSEがインパクトを与えるわけ。

livingdining

1日1組限定のレンタル邸宅「THE HOUSE」。全室オーシャンビューのラグジュアリーな空間で、大切な人とのプライベートなひとときを過ごせる。

小林 だから、自分たちのコンテンツは何なのか、ストーリーは何なのか、ってことをしっかり意識した上で、どういう人にアプローチすれば本当に人を動かすことができるのかを考えることが重要になってくる。その対象が、これまでみたいにメディアではなくなっていくんじゃないかな。

天野 メディアリレーションだけがPRじゃなくなるということですよね。

小林 そうなってくると思います。特にTVなんて、THE HOUSEが取り上げられても全然ダイレクトには反響ないよ。もちろん、「見たよ!」って人は多い。でも予約にはなかなか結びつかない。知名度=コンバージョンでは全然ないんだよね。

宿っていうカテゴリーが特殊だってこともありますけど、本当にそのブランドが響く集団をどうやって見つけ出すかが、これからは重要になると思う。同じ100万人であっても、層が違えば効果が違うわけだから。

あとは、さっきの例だと、山中美智子さんがTHE HOUSEのことを想って、「ヤバい!」っていう気持ちが伝わるコメントを書いてくれたことも大きい。「書いてください」ってお願いするんじゃ、もうダメだと思う。私がもし、インフルエンサーにお金を出してSNSで取り上げてもらっても、それで発した言葉とか写真では人は動かないと思うの。

フォロワーが本当に商品・サービスをいいと思うかどうかって、伝える人が惚れ込んでいるかにかかってると思うんだよね。だから、ソーシャルリレーションシップのコアになる人たちと本当にサービスや価値で結びつくことが重要な気がします。

天野 THE HOUSEのPRをお手伝いさせていただいてますが、麻衣美さんはシグナルのプロモーターたちをTHE HOUSEに招いてくれましたよね。世界観を体験させてくれるから、プロモーターにも愛情が生まれるんだと思うんです。

小林 私たちの哲学を伝えたかったの。事実とか、サービス内容とかよりも、なぜTHE HOUSEとかTHE HOUSE on the beachをつくりたいと思ったのか、お客さんたちにどういう体験をしてほしいのかを伝えたかったんです。

img_2670_01

小林 メディアにアプローチするにしても、リリースを流すのと、「私、ここに泊まったんですよ」って話すのとでは全然伝わるものが違うよね。

「ステキ」の一言で満足せず、「ヤバい!」と言わせる気概を

天野 最後に、シグナルがより良くなるためのアドバイスをいただけますか?

小林 シグナルというより天野くんの話になっちゃうけど(笑)、誠実でまっすぐで頭もいいんだけど、アクがない。アクが強くてプライドが高い人だと凄みが出て、大きいことを成し遂げたいっていうクライアントの部長さんとかとの相性が良くなるんだよね。ウルトラCとかもやってくれちゃうイメージがつくれるというか。

天野 たしかに、個性が弱いっていうのは感じていて、コンサルティングは得意でも、アクが強い人と比べるとクリエイティブジャンプをもっと強くしたいなって。

小林 クリエイティブジャンプを伸ばすには、ミーハーになることかな。遊びも含めてなんにでも顔を突っ込んでみるとか。たとえば、プロポーズするにしても、「みんなと同じやり方じゃ嫌だから新しいやり方はどんなのかな?」とか、家探すときにも「どうしたら面白い物件が見つかるかな?」とか、いちいちそういうことを意識すると面白いかも。

天野 なるほど。ホスピタリティは高くありたいと思っていて、常にちょっとしたサプライズとか、企画ゴコロを持つようにはしてますが、凄みを出すっていうのは悩ましいですね。麻衣美さんはどこかで自分が凄みを得たなって感じました?

小林 人生経験からかな(笑)。ホスピタリティとかサプライズの話に通じるけど、私はプロとして「ヤバい!」って言わせるくらいの気概を持つようにしてます。私は裏方として人を喜ばせるのが好きで広告業界に入ったんだけど、仕事もプライベートもいろいろと経験して気づいたのが、人に感動を与えるのって簡単じゃないし、自己満足で終わる人がほとんどだってこと。

THE HOUSEでは、「ステキ」の感想で満足しないで、「ヤバい!」って言葉をどう引き出すかってことを考えてます。THE HOUSEは入口の扉がとても小さくて、つまり最初は中が見えないようになっているのだけど、中に入った瞬間にゲストがなんて言うのかを毎日必ずチェックしてるの。「ステキ」って言った人には、「もしかして、はまらなかったのかな?」って考えます。

天野 えっ?「ステキ」じゃダメ?

小林 ダメ。「ヤバーい!」って感じじゃないと。そういう「ヤバい」って気持ちがシェアにつながるから。でもね、晴れた天気のときには8割以上の人が「ヤバい」って言葉を使うの。もう、こちらの説明とかも聞かずに写真をバシャバシャ撮って、Instagramとかを始めちゃう。

「ステキ」って、女性はみんな言うからね(笑)。まったく信用してないの。プレゼンもそう。「いいですね」って言われたんじゃダメ。「目からウロコです」とか、「これ、ヤバいですね!」って言わせるくらいの気概が必要だと思いますよ。

天野 なるほど。その気概が凄みにも表れるのかもしれませんね。クリエイティブジャンプと凄み、意識していきます。本日は本当にありがとうございました。

※1 DeNAの運営していた健康系キュレーションメディア「WELQ」に掲載されていた情報に、著作権や薬機法上の問題が含まれていたことからサイトを閉鎖した問題。

構成:福田さや香