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SPECIAL2017.3.30 (Thu)

乳首の透けない白Tシャツ「正装白T」のオーナーに聞いた、今PR会社に求めること

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  • 天野渉 | Wataru Amano
  • 株式会社シグナル 取締役COO

インターネット発の情報がTVにも取り上げられる時代になり、マスメディアが中心だった時代のPR手法では効果が上がらないケースも出てきています。

PRのあり方が見直されれば、当然PR会社に求められることも変わります。今回は、クリエイティブディレクターであり、発売後すぐに完売した乳首の透けないTシャツ『正装白T』のオーナーでもある株式会社アールの川辺洋平さんに、今PR会社に求めることを伺いました。

PR会社や広告代理店は時代のリトマス紙だと思います

天野 つい最近も正装白TのPRをお手伝いさせていただきましたが、川辺さんとのお付き合いって、振り返ってみると結構長いですよね。

川辺 僕が電通にいた2008年のころからですね。それまでのマス主体だったプロモーションからデジタルが注目されるようになったくらいの時期で、デジタル領域を活かしたプロモート活動をシグナルと一緒にしたのが始まりでしたね。

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  • 川辺洋平 | Yohey Kawabe
  • 株式会社アールCEO、クリエイティブディレクター、イラストレーター。株式会社電通を経て独立。特定非営利活動法人こども哲学・おとな哲学 アーダコーダ代表理事も務める。

天野 今日は、即完売して話題になっている正装白Tのことから伺いたいと思うのですが、この反応は予想通りだったんですか?

川辺 予想としては、僕の周辺の広告業界の人たちがまず買ってくれて、4ヶ月くらいかけてだんだんとその周囲にまで広がっていくイメージを持っていたんですよ。でも、初日に50枚完売したうち、広告業界で買ってくれた人は1人だけ。実際に購入してくれた人は、予想外に僕の周囲のさらに外側にドーナツ状に存在していたっていうのが、販売してみてわかったことです。

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「白いシャツは乳首が透ける」という男性の悩みを解消する『正装白T』。ビジネスシーンやフォーマルな場でも乳首の透けを気にせず着用できる。株式会社アールを主幹とした「透けない白T製作委員会」が製作。

川辺 でも面白いことに、完売のニュースが出て、さらにJ-CASTニュースに取り上げてもらえたことをきっかけにバズったら、インターネット通販で再販したタイミングで知り合いがすごく買ってくれたんですよ。広告業界の人ってイノベーターじゃないんだなって感じました。

これは広告だけでなくPR業界の人にも当てはまると思いますが、彼らは時代のリトマス紙なんです。面白いんだなって知ってから、いち早く買う。だからイノベーターよりちょっと遅いんです。逆に言えば、彼らが買うってことは、もう流行が来るってこと。そういう意味では信頼できる。これは勉強になりました。

天野 僕は買いましたけどね(笑)正装白Tは、コンテンツとしてすごく優れていると思っています。いいコンテンツは情報を走らせる力を持っているんですよね。

川辺 今回、シグナルが正装白Tを面白いと思ってくれたから一緒にできましたけど、もし、「やってもいいですよ」っていう反応だったら、僕が企画を直さないとダメだと思うんですよね。先ほどリトマス紙の話をしましたけど、PR会社からの反応が悪かったら、企画が時代に合ってないってことだから。

PR会社を選ぶ時代から、PR会社が選ぶ時代へ

天野 時代のリトマス紙とおっしゃいましたが、川辺さんが今PR会社に求めるのはどういったことですか?

川辺 これまでのような、まず何らかの商材があって、PR会社にお化粧で見栄えをよくしてもらってメディアに拾われるPRって、もう終わってると思うんです。そうじゃなくて、時代のアンテナであるPR会社が、「面白い」「この人の顔を化粧したい」と思うかどうかが重要になってくる。クライアントがPR会社を選ぶ時代から、PR会社に選ばれるように努力しなければいけない時代になってきていると思います。

これからは、PR会社がクライアントに対して、面白いかどうかを言ってあげていいと思うんです。もうPRは頼まれてするような受け身の仕事じゃなくなっているんですから。

天野 面白い考えですね。では、川辺さんが数ある会社の中から、パートナーとしてシグナルに声をかけてくださる理由はどういったところにあるんですか?

川辺 いっぱいありますけど、3つ挙げるなら、「英語が話せるスタッフがそろっていること」「コンテンツが作れること」そして、「スタッフが若いこと」です。

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川辺 1つ目の英語力は、グローバル対応が必要な仕事には欠かせないから。2つ目のコンテンツについては、コンテンツをきちんと用意せずに文章構成やキーワードといった言葉をいじって検索に対応するだけでは勝てないので。そういうプル型ではなく、プッシュしていくためにはビジュアルが大事だし、インターネット上ではどう面白がられるかがわかった上で設計されたコンテンツが必要。シグナルには、そこを頼めるからです。

3つ目のスタッフの若さは、一番大事だと思っています。面白いものを見つけてシェアするとか、新しいものに飛びつける感度は、やっぱり若い人のほうが強い。ライフスタイルが固定化してしまう手前の、若い人たちがたくさんいることがシグナルとずっと仕事をしたいと思わせてくれる一番の理由です。

天野 ありがとうございます。正装白TのPRをお手伝いさせていただいた際、川辺さんはスタッフのことを業者ではなくチームの一員として扱ってくれましたよね。正装白Tをチームの全員に1枚ずつプレゼントしてくれたり、みんなで写真を撮ったり。

川辺 一緒に作ってきたんだから、1枚あげるでしょう。何か意図があってのことではなくて、当然のことです。ビジネスだからって、「チームビルディング」みたいなカタカナ語を使って小難しく考えるのではなく、人間関係の本質はご近所づきあいみたいなものだと思ってますから。

それに、シグナルのことを業者さんだと思ったことはないですよ。正装白Tの件に限らず、僕は仕事を一緒にする人のことをお金の関係で捉えることはないです。

天野 川辺さんとか、シグナルを好きでいてくれる人ってそういう方が多くて、ありがたいなって思います。

PR会社に求めるのは「本音」。面白くなければ言ってほしい

天野 正装白Tの次は、アールとしてどのような展開を予定されていますか?

川辺 会社も正装白Tも、あまり企画やビジョンがはっきりしていないほうがいいんじゃないかと思っているんですよ。その時に面白いと思ったことに素直でいるために。だから、先に道筋を決めてしまわずに、面白がってくれた人と新しいことをやっていくつもりでいます。

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天野 今後のご活躍も楽しみにしていますね。これからも良い関係でいるために、川辺さんがシグナルに求めることがあれば教えてください。

川辺 PR会社に求めることにも通じますが、これからも本音を言ってほしいですね。PR会社に採用されたスタッフは、その時点で感度の高さに合格が出ているわけです。だったら、クライアントや上司に本音を言ったほうがいい。「わかります」って迎合するんじゃなくて、「私は面白いと思わない」とか、「私ならこうします」って。それが、僕がシグナルに求めることだし、クライアントにも思ったことを伝えていってほしいなと思います。

天野 なるほど。以前、とあるクライアントに、「商品のロゴを消してほしい」とお願いしたことがあるんですよ。その商品にすごく愛着を持っていたんですが、ロゴだけは今の時代にそぐわないと思っていて。普通、そんなことを言ったら、ものすごく怒られちゃうかもしれない。だけど、そのクライアントも「そう思ってたんですよ!」って共感してくださって、ロゴのない洗練されたデザインに変わったんです。かなり社内のルールと戦ったそうですが(笑)

クライアントはシグナルに完全に寄り添ってほしいわけじゃなく、コミュニケーションの専門家としての意見を求めていると感じます。だからスタッフと、「思ったことを“あっけらかん”と伝えたほうがいいね」とよく話します。専門家として率直に伝えることで、クライアントにメリットを提供できると思っていますから。

川辺 天野さんはそういうことがもちろんできるし、シグナルの若い人たちにもしていってほしいなと思うんです。それで、クライアントが良いものを作るきっかけになったらいいですよね。

天野 また新しいことを始めるときには、ぜひご用命ください。本日はありがとうございました。

構成:福田さや香

写真:板谷俊成