
Instagramの「いいね」非表示後の影響は? 2019年10月~12月のSNSトレンドレポート
- 奥原祐太 | Yuta Okuhara
- 株式会社シグナル SNSディレクター
こんにちは。SNSディレクターの奥原です。
あっという間に2019年も終わりですね。企業アカウントを運営しているみなさま、今年も1年お疲れ様でございました。今年の締めくくりに、2019年10月~12月のSNSトレンドレポートをお届けします。みなさまの参考になれば幸いです。
2019年10月~12月における主要SNSの動向
1.Instagram
大きな動き
「いいね!」非表示のテストが全世界で開始されました。日本でも7月から開始しているのは前回のSNSトレンドレポートでお伝えした通り。Instagramの意向では「より画像や動画、投稿の内容そのものを見てほしい」という意図があるようです。さて、テスト開始からどのような変化が見られたのでしょうか。
最も影響を受けていると思われるのがインフルエンサーです。「いいね!」の数は彼らのビジネスに多大な影響を与えています。SocialMediaTodayは11月8日、分析ツールを提供するキプロスのHypeAuditorの調査によって、フォロワー数が5000人から2万人のインフルエンサーは「いいね!」数が3%から最大で15%減っていることが分かったと報じています。
ただ面白いことに、日本だけはフォロワー数が1000人から5000人、または10万人から100万人のインフルエンサーは、このテスト以降、「いいね!」数が約6%増えているという結果が出ています。
空気を読むとされる日本人の国民性を考えると意外ですね。いずれにせよ、企業にとっては「いいね!」の数よりも企業メッセージやブランドを意識した本質的なクリエイティブが求められることに変わりはありません。他方で、「いいね!」を再表示するGoogle Chromeの拡張機能が登場しています。「いいね!」非表示に抗いたいユーザーが一定数存在するのは確かですね。
10月には、「Instagram Day Tokyo 2019」が開催されました。このイベントでフェイスブック ジャパン執行役員本部長の鈴木氏は、18~29歳のユーザーの総利用時間は月間1億時間以上に上ると語りました。もはやInstagramはマスレベルのリーチを獲得できるプラットフォームにまで成長しています。また、Instagramストーリーズについては、「日本で1日当たりに投稿されるストーリーズの数は700万件に上り、DAUの70%が投稿を行っている。最も見られたストーリーズの中でビジネス投稿が占める割合は3分の1もあり、日本においてもビジネス投稿はしっかり利用者にリーチしている」と述べました。企業アカウントによるストーリーズの活用はもはや必須と言えるでしょう。
機能追加・更新情報
TikTokに似た動画編集ができる機能「Instagram Reels」がブラジルで提供開始されました。ストーリー内で使用できる機能で、口パク動画を音楽に同期させることができるようです。Instagramとの相性がよく、「TikTokは知っているけど利用していない」というInstagramユーザーの間で流行しそうです。他にも、アプリ内で自分のInstagramアカウントのQRコードを表示する機能が追加されたり、親しい友達と画像や動画を共有するアプリ「Threads」をローンチしたりと、新機能の開発もどんどん進められています。
さらに、いじめへの対処としての「制限」機能、投稿前にAIが不快な内容を含んでいないか検出し、投稿者にその旨を通知する機能などを追加ました。プラットフォームをより有意義に使ってもらうためのアップデートが随時行われています。
広告に関しては、「発見」タブへの広告表示が可能に。また、ショッピング投稿がフィード広告に配信できるようになりました。特に「発見」タブへは利用者の興味関心に沿った投稿が表示されるので、ユーザーインサイトをよく理解したクリエイティブであればネイティブ広告として強力な手段となるでしょう。
2.Twitter
大きな動き
11月にトピックをフォローできる機能が追加となりました。アカウントではなくサッカーや映画など、会話されている話題ごとフォローできるようになります。興味関心軸でつながるTwitterにおいては非常に重要なアップデートだと考えられます。企業アカウントとしてはいかにその話題に入り込むかが重要となってくると予想されますので、トピックハッシュタグの活用やトピックに紐付いた自社の情報発信など、運用の方法自体が変わってくるでしょう。
機能追加・更新情報
ダイレクトメッセージを読まずに削除できるようになり、検索機能も追加されました。また、通常の投稿画面から投稿予約ができるようになりました。TweetDeckを開かなくても予約できるようになるのでSNS担当者の負担が少し楽になると思われます。さらに、画像に関してもWebブラウザからJPEG画像をアップロードする際に、画質をほとんど下げずにアップロードできるようになりました。これも担当者としては嬉しいアップデートです。
また、偽アカウントの削除も引き続き積極的に行っています(11月11日に大規模に行われました)。それに関連し、6ヶ月以上ログインしていないアカウントは削除するという発表があり、話題となりました。ユーザーから「故人のアカウントを安易に削除していいのか?」という声が多く寄せられ、結果、2日後に故人アカウントの対処についての方針が決まるまでは削除はしないという発表がありました。Twitterの対応の早さはもちろん、ユーザーの声にしっかりと答える姿勢は素晴らしいと思います。
3.Facebook
大きな動き
Instagramの広告収入の影響で増収増益のFacebook。仮想通貨「libra」の進退やFacebook payのサービス開始など、決済関連のニュースが目立ちました。また、虚報が溢れる政治広告の現状に対し、マーク・ザッカーバーグ氏からファクトチェックや排除を行わない旨の発言があり、賛否両論を呼んでいます。政治広告を禁止したTwitterとは対照的と言えるでしょう。
また、2020年5月5日、6日に「F8」がサンノゼで開催されます。日本では衰退の一途を辿っているとされるFacebookですが、いまだ世界を牽引する巨大プラットフォームです。どのような方針が発表されるのか注目です。
機能追加・更新情報
Facebookのロゴが刷新されました。
新しいロゴは、InstagramやWhatsApp上にも、Facebookが提供するサービスであることを明確にするために「Instagram from FACEBOOK」などと大文字で示されるようになりました。その際、ロゴの色は各傘下企業に合わせて変更されるそうです。成功している企業にしっかりとFacebookの名を刻むことでブランディングにつなげようという意図があるのではないでしょうか。
アメリカでは「Facebook NEWS」のタブが追加されました。Facebook自ら選定したニュースを提供することでフェイクニュース対策を行うようです。
また現在、「Popular Photos」という機能をテストしています。これは、アルゴリズムによって選定された友達の写真をニュースフィードに全画面表示し、Instagramのフィードのようにスクロールして閲覧できる機能のようです。ストーリーズもそうですが、Instagramで成功した機能をFacebookにも取り入れていく方針のようですね。
4.LINE
LINEの友だちを獲得するための広告を手軽に出稿できる「友だち追加広告」機能がついに提供開始されました。これを利用すると、LINE NEWSやLINEアプリのタイムラインに友達追加を促す広告を表示することができます。付属のシミュレーション機能で友だち獲得単価が予測できるので、広告費用に対して獲得が見込める友だち数を事前に確認した上での出稿が可能です。
5.TikTok
中国ではもはや当たり前となっているライブコマースが、TikTokユーザーの一部に提供開始されています。10億人以上のユーザーを抱える巨大プラットフォームに成長したTikTokは、いよいよライブ配信によるインフルエンサーへの還元を考え始めたようです。今後ますますインフルエンサーのTikTok活用が増えることが予想されます。
また、音楽のサブスクリプションサービスにも参入するようです。TikTokが運営するByteDanceはすでにワーナーミュージックやソニーミュージック、ユニバーサル・ミュージックとライセンス契約を締結しており、今後Apple MusicやSpotifyにとって大きな脅威となると予想されています。
2020年のSNSトレンドは?
東京オリンピックの開催に伴い、「スポーツ×SNS」の需要増加が見込まれます。Twitterで試合内容をリアルタイムに共有したり、Instagramで海外の選手の投稿をチェックしたり。また、ライブ配信や動画広告などオリンピックにおけるSNSの活用から目が離せません。
2020年には「5G」サービスが開始します。通信速度は20倍、遅延は10分の1、同時接続数は10倍となり、動画視聴に関するストレスが一気に解消されると予想されています。この影響も受けてSNSにおいては、動画を使ったコミュニケーションが増加し、ライブコマース(インフルエンサーがライブで商品を売る)が発展すると思われます。また、動画メインであるTikTokのような新しいプラットフォームが誕生するかもしれません。ほかにも、ARやVRが多用されるようになり、動画で表現するコミュニケーションの幅がどんどん広がるでしょう。
ユーザー側は、コンテンツを動画でみることが「普通」となり、もはや静止画像では物足りなくなる可能性があります。コンテンツを制作する側も技術の発展により、質の高い動画を安価に制作できるようになりつつあります。アイデアやネタを考案するときも、動画ベースでコンテンツを考えるのが当たり前の時代になるかもしれませんね。
各プラットフォームにおいても、動画コンテンツが表示されやすいアルゴリズムにどんどん変わっています。2020年は動画を中心にしたコンテンツ制作のベースを作る良い起点となる年になるのではないかと考えます。