HOW TO2017.4.12 (Wed)

【ディレクター向け】デザイナーと良好な関係を築くためのコミュニケーションとは

ohba.png

  • 大庭武士 | Takeshi Ohba
  • 株式会社シグナル Webディレクター

こんにちは。Webディレクターの大庭です。
ディレクターにとってデザイナーは、クライアントが求める制作物を作り上げるために欠かせない存在です。ただ、一緒に仕事をしていると、クリエイティブな領域だからこそコミュニケーションが難しい場面も出てきます。お互いにいいものを作ろうとしているだけなのに、デザイナーと意見が衝突してしまった経験を持つディレクターは少なくないでしょう。

そこで今回は、これまでのディレクション経験から気づいた、デザイナーとの付き合い方についてお話ししたいと思います。ディレクターはもちろん、普段デザイナーとのお付き合いがない方も、デザイナーの考え方を知るきっかけになるかもしれません。

こんなときはどうする? デザイナーとのコミュニケーションのポイント

(1)好みのデザインでなくても、気持ちよく作ってもらうには?

デザイナーには、それぞれに好きなトーンや得意なデザインパターンというものがあります。初めて一緒にお仕事をする前には、ポートフォリオを見せてもらうことが多いでしょう。そこでつかんだ好みや特徴は、そのデザイナーが得意でないパターンのデザインを依頼するときにも活用できます。

たとえば、デザイナーの好みの色を指し色に使うことを提案するなどして、全体的には得意なパターンとは違っても、好きな方向性に近づくようにするんです。「なんでそんなことを?」と思うかもしれませんが、僕の経験上、そうすることでデザイナーが気持ちよく仕事ができて、結果的に制作スピードも上がるからです。

ポートフォリオだけではなく、デザイナーの服や、よく見ているWebサイトにも好みは表れます。こうしたところからヒントを得るのもいいかもしれません。

(2)クライアントからの戻しには赤字がびっしり。デザイナーにどう伝えるか

納品物に対してクライアントから多くの修正指示があった場合、デザイナーにそのまま伝えるのはいい方法とは言えません。ディレクターの役割は、クライアントや営業からのフィードバックを、制作メンバーが動きやすいように翻訳して伝えるところにあります。

デザイナーは、クライアントが求めるものを時間をかけて考え、形にしています。それだけに、納品物が気に入ってもらえなければ、どうしても残念な気持ちは生まれてしまうわけです。視覚的に赤字だらけの戻しをいきなり見てしまうと、前向きに直そうという気持ちの前に残念な気持ちが出てきてしまうことだってあります。これでは、修正をスムーズに進めてほしくても、デザイナーが納得するまでに時間がかかってしまうでしょう。

ではどうするかというと、僕の場合は修正点をコンパクトにまとめてから伝えるようにしています。そうすることで、作ったもの全体が否定されているような印象を与えないようにするんです。また、ディレクターや営業も含めた全員で指摘を受け止めて、どう正すかを考えましょう、というスタンスを示すように気を付けています。本来、修正が発生するのは作った人だけの責任ではありません。ディレクターや営業にも責任はあるわけです。だから、必要以上にデザイナーを追い詰めないための配慮はあるべきだと思っています。

(3)戻しの“ニュアンス”をデザイナーにうまく伝えるには

デザイナーに修正指示を伝える際、もう1つ気を付けるべきポイントは、クライアントの意図の伝え方です。たとえばクライアントから、「ここをもう少し明るく」という修正指示があった場合、明るさにもいろいろありますから、そのまま伝えてもデザイナーは困ってしまいます。「なぜ明るくしたいのか?」「明るいとはどういうことか?」「どの程度の明るさか?」などをディレクターがきちんと理解してデザイナーに伝えなければいけません。

ただし、クライアントの意図は、明確に表現されるとは限りません。言葉には表れなくても、「なんとなく気に入っていない」ということもあるわけです。そういった感情は、クライアントとのコミュニケーションの中で感じ取る曖昧なもの。それをデザイナーに伝えるには、最初にクライアントと決めたトンマナに戻って何がダメなのかを考え、具体的な指示に落とし込む必要があります。

先ほどの例だと、「トンマナに立ち返ると、ここでいう明るさはこのくらい。だから、このレベルまで明るくしてバランスをとったらどうなるか、考えてみてもらえますか?」といった依頼の仕方になります。「明るく」という指示を曖昧なままにせず、制作側が動きやすいよう言葉にするディレクションこそが、ディレクターに求められる責任なのだと思います。

(4)デザイナーの個性がデザインに出過ぎてしまったときは

僕は基本的に、デザイナーには自分の色をどんどん出していってほしいと思っています。それがデザイナーというものだし、自分が作ったものにどれだけ痕跡を残せるかはデザイナーとしてやっていく上で重要なことだと思っています。

とはいえ、クライアントの意図に沿わないものができてしまっては困りますから、やりすぎてしまったときはデザイナーに意図を伝え直す必要があります。こうした場合、相手がベテランデザイナーだと「こだわりが強くて直してもらえないのでは?」と思うかもしれませんが、経験豊富な人ほど、きちんと伝えれば改善してくれます。修正してもらったものを見て、「こんな風に変わるんだ」と感心することすらあります。だから僕はこうしたやりとりをネガティブにとらえず、むしろ楽しんでいるんです。

ちょっとの修正であっても大変。敬意を持って仕事をお願いできているか

今回は、コミュニケーションが難しい修正の話を中心にお伝えしてきました。人によっては、「プロなんだから、修正くらい黙って対応してよ」という気持ちをデザイナーに抱くかもしれません。でも僕は過去の経験から、そうは思えないのです。

前職で、デザイナーの代わりにちょっとしたテキストの修正をすることがあったのですが、Illustrator上で1つのパスを消したら全部が消えてしまって……。その後、怖い先輩からめちゃくちゃ怒られました。そんな苦い経験から、ちょっとの修正であっても大変だということを理解した上でお願いするようにしています。

デザイナーに限らず、自分ができないことができる人って、やっぱりすごいと思うんですよね。だから、敬意を持って仕事をお願いして、相手には気持ちよく制作してもらいたいと思っています。ディレクターの価値は、制作を円滑に進めてこそ発揮されるんですから。

構成:福田さや香