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HOW TO2017.4.25 (Tue)

1日2件だった販売数が30件に! 広告制作にも活用できる“デザイン思考”とは

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  • 板谷俊成 | Toshinari Itaya
  • 株式会社シグナル Web広告コンサルタント

こんにちは。Web広告コンサルタントの板谷です。
突然ですが、次の2つのバナー広告のうち、より商品ターゲットにアクション(クリック・購入)を起こしてもらいやすいのはどちらだと思いますか?

( A )
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( B )
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Aだと思った方は、ユーザー目線で考えるセンスがあると言えるでしょう。Bだと思った方は、「ポイント大還元中」や、「送料無料」というお得な情報が大々的に示されていることを理由に選ばれたのかもしれませんね。もしかすると、これまでに「訴求ポイントはおさえているのに、広告の反応がイマイチ良くない……」という悩みを抱えたことはないでしょうか?

実は、私は新人のころ、Bのようにお得情報を打ち出した広告を制作し、失敗した経験があります。なぜ、BよりAの方が効果が高いと言えるのか? そのカギとなる「デザイン思考」について、私の実体験を交えながらご説明したいと思います。

Appleの商品開発にも使われている“デザイン思考”とは?

そもそも、“デザイン思考”とは何なのか

デザインというと、「イラストを描く」「レイアウトをする」といったものをイメージする人もいるかもしれませんが、ここでいうデザインは「ライフデザイン」や「キャリアデザイン」で用いられている意味と近く、「目的をもって何かを“設計する”」といった広義の意味で使われています。

では、デザイン思考とは何なのか? 簡単に言うと、「観察やインタビューを通してユーザーのニーズや課題に目を向け、それを解決する商品やサービスを開発・設計すること」です。

このニーズとは“顕在的”なニーズではなく、「(気付かなかったけど)実はこういうものを求めていた!」という“潜在的”なニーズであり、それを導き出していく過程もこの思考のポイント。つまり、デザイン思考とは、ユーザーが自分では気づいていない課題を発見し、その解決策を導き出すための思考法なのです。

代表例はAppleの商品開発

デザイン思考を用いた最も有名なケースに、Appleの商品開発があります。Appleは、いくつもの革新的なデバイスを開発してきましたが、どれも発売当初は業界紙から「的外れなものを出している」と酷評をうけていました。しかし、実際にはユーザーが求めている本質をついた製品だったため、爆発的に大ヒット。ターゲット層であるユーザーを丁寧に観察し、潜在的な課題を見いだした結果、時代を代表する巨大企業となったのです。

デザイン思考の具体的なプロセス

デザイン思考には次の5つのステップがあります。

(1)共感
観察やインタビューを通じてユーザーの立場になって考え、共感します。ここで大切なのが「共感できる・できない」という主観は抜きにして、「共感する=ユーザー目線になる」という姿勢です。

(2)問題定義
ユーザーの潜在的なニーズを洗い出し、現状の課題を明らかにします。その上で、目指すべき理想の状態を設定し、課題を抱えている人たちの共通項を見つけてペルソナを作成します。

(3)アイデア創出
理想の状態に行きつくために、考え得るさまざまなアイデアを出していきます。重要なのは質ではなく、できるだけ多くのアイデアを出すことです。

(4)プロトタイピング
生み出したアイデアを実際に形にします。

(5)検証
ユーザーの反応を見て、つくりだしたアイデアは目的を達成できているか検証します。

この一連のプロセスを、2回以上繰り返すのが理想です。

1日の販売数が2件から30件に! 運用型広告に活用した例

ここまで概要を説明してきましたが、あまりピンとこないという方もいると思います。私自身、学生時代に初めてこの考えを学んだときは、具体的な活用方法がイメージできず、正直あまり興味がもてませんでした。

そんな私が、このデザイン思考の重要性に気付いたのは、新卒で入った前職の広告会社で働きだしてからです。営業部に所属していたのですが、元々Photoshopが使えたこともあって、人手不足のデザイナーに代わりバナー制作を手伝うことになりました。そこで初めて作ったのが、月に1~2回ほど定期的に配信していた健康食品の当日限定セールのバナーでした。当時は初めてということもあってバナーにどういった文言を入れれば良いかわからず、とりあえずいつものポイント還元や、タイムセールの内容を打ち出し、商品の詳細については一切触れずにいました。

その結果、配信当日の販売数は、見込みより少ないたったの2件。私は、「ポイント還元やタイムセールというお得な情報を打ち出したのになぜだろう?」と悩み、いろいろと考えた末、「ユーザーの真のニーズを汲み取れていないのではないか?」と思い至りました。そんなとき、大学院時代に学んだこのデザイン思考のことを、ふと思い出したのです。

さっそく、健康食品のターゲット層と一致する私の母に、「健康食品は買ったことがあるか?」「なぜ買おうと思ったのか?」など簡単なインタビューをしました。インタビューをしていく中で気づいたのが、広告を見て健康食品を購入する際、一番の決め手となるのは、「〇〇という成分が入っているから」「△△というキャッチコピーに惹かれて」という、価格とは別の要素であるということです。

いくら安くても、その商品が欲しいものでなければ当然購入してはもらえません。つまり、「〇〇という成分が入っていて、××というシチュエーションに使える」というところまできちんと示した上で、お得であることを伝えた方がユーザーに刺さるのだと気がつきました。「そんなことは当然」と思う方もいるかもしれませんが、まだ経験の浅かった当時の私は、そんなことにも気づかずに広告制作をしていたのです。

母にインタビューに協力してもらった後、それをもとに関係者とアイデアを出し合い、バナーをつくり直しました。お得感のみを打ち出すのはやめて、「〇〇のシーンで活躍します」といったユーザー目線の文言を入れるようにしたのです。

その結果、商品、LPは同じにもかかわらず、1日の販売数を30個へと飛躍的に伸ばすことができました。見込み客に刺さるバナーに変えたことで、高い販売数に繋がったのではないかと思います。この経験は、いかに自分の思い込みで広告をつくっていたのかを痛感し、デザイン思考の重要性に気づくキッカケとなりました。

デザイン思考の実践に役立つインタビューシートを用意しました

概念だけを聞いてもすぐにアクションしづらいと思うので、今回は多くの人が実践しやすいよう、インタビューシートを作成しました。

記入例としてあげているのは、「価格4000円程度、高音質・ファッション性を兼ね備えたイヤホンの広告制作をする」と仮定した場合のインタビュー内容です。記入例のように細かく掘り下げて、できるだけ多くの人にヒアリングをしていきます。そして、インタビューした内容を見比べて、ユーザーの共通軸を見つけていきます。それをもとにひとつのペルソナを設定し、広告のクリエイティブを制作するという流れです。

このシートをもとに丁寧にヒアリングしていくことで、ユーザー目線になってサービスや製品、広告物をつくるきっかけになれば幸いです。潜在的なニーズを引き出すのには経験が必要ですから、どんどん実践を積んで、コツをつかんでいきましょう。

デザイン思考のインタビューシート(Excelファイル)

構成:入松川周子 画像:板谷俊成