Narrative
HOW TO2018.1.15 (Mon)

「ストーリー型」から「ナラティブ型」へ。いま求められるコミュニケーションの変化とは

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  • 天野渉 | Wataru Amano
  • 株式会社シグナル 取締役COO

こんにちは。シグナルCOOの天野です。
昨年末のことですが、Forbes JAPANに『2017年は「ストーリー」型マーケティング終焉の年に』という興味深い記事が掲載されました。同記事はマーケティングの変化を次のように指摘し、アウトドアブランドであるパタゴニアの例を挙げてストーリーに代わる「ナラティブ」の概念を紹介しています。

ブランドは「ただ一つの声」となるのではなく、より大きなコミュニティーの集合的な考えを体現するものへと進化することが求められている。

「ナラティブ」とは「語ること」を意味しますが、ストーリーテリングのように出来上がった物語を語るのではなく、より自由に一人ひとりが主体となって語るイメージを持つ言葉です。では、「ナラティブ」が求められることで企業はどう変化していくことになるのか、ここで考えてみたいと思います。

ストーリーテリングの反省点とは

記事に便乗するつもりはないのですが、時代はより対話を求めていると僕は考えています。これまで主流だったストーリーテリングには反省点があって、それは従来の広告と同じように結局は一方通行のコミュニケーションだったことです。いまは情報過多かつ生活者が企業の発する情報を厳しい目で見ている時代ですから、出来上がった物語を企業が用意すれば喜んで受け取ってもらえるわけではなくなってくるのも自然なことです。

とは言え、ストーリーテリングが古くて悪いものなのかと言えば、そんなことはありません。ストーリーテリングをしてきた企業が新たなフェーズに進もうとすると、ナラティブが求められるようになるのであり、ストーリーはナラティブを生むための土台、いわば物語の世界観としてなくてはならないものです。

それぞれの企業がミッションに基づいたストーリーを語り、生活者と共に「こうありたい」と話せるような土壌を用意する。そして共にブランドをつくっていき、社会にポジティブな影響を与えていく――ナラティブとはこういうことです。

ナラティブをどう生み出していくのか

決まった脚本のあるストーリーと違い、ナラティブは一人ひとりが語ることで生まれていくものなので、そこに終わりはありません。企業には、プロダクトやサービス、社会課題への取り組みなどを通じ、自社のミッションに基づいた一貫性のあるコミュニケーションをし続けることが求められます。

その際、「そもそもミッションはどう作っていったらいいのか?」といった疑問が生まれることもあるかもしれません。日本企業では海外に比べ、ミッションが明確になっていないことも多いです。しかし、ミッションとは自社が存在する意義であって、多くの会社では言語化されていなくてもすでにあるものです。この機会に言語化し、表現していくことにチャレンジしてもいいのではないでしょうか。

また、「日本の大企業にとってナラティブは難しいのではないか」というご指摘もあります。ナラティブの土壌を作るというのは単に外部に向けた話ではなく、組織内部にも変化が生まれることです。経営者がミッションを語る姿勢が必要ですし、スタッフ一人ひとりがもっと自分の役割にプライドを持って語れるようにする配慮も必要でしょう。こうした取り組みを大企業が進めていくのは大変かもしれません。ですが、ナラティブの時代への変化というのは急激に起こるものではありません。一人ひとりの話をきちんと紐解いて企業全体を進化させていったとしても、遅くはないと思います。

ナラティブは「都合のいいコミュニケーション」ではないが……

日本ではまだナラティブという概念自体が根付いていないので具体的にイメージしにくいかもしれませんが、ちょうどこの原稿を書いている最中に「#任天堂を許すな」というハッシュタグが任天堂ファンの間で流行し、これもナラティブの一つの形なのではないかと感じました。任天堂はゲームをつくるだけでなく、ファンとともにブランドをつくっており、その結果として愛され続けているのでしょう。

ナラティブが主流の時代になると、これまでのように企業の筋書き通りにコミュニケーションを進めることができないという難しさを感じるかもしれません。ごく短期的に見れば企業にとってナラティブは都合のいいコミュニケーション方法ではないでしょう。ですが、本当の意味で生活者と共に歩み、見せかけではない本質的なブランドづくりができる時代になったと捉えることもできます。この変化を受け入れられる企業こそが、長く愛される企業となるのだと僕は思っています。

僕の妄想を炸裂させた2018年のコミュニケーション論。ご意見・ご感想があれば、ぜひこちらのフォームからお聞かせください。

構成:福田さや香